1. HOME
  2. Reports
  3. 人材育成
  4. 質的研究法「M-GTA」を活用した研修プログラム設計(第2回)

REPORT


人材育成

質的研究法「M-GTA」を活用した研修プログラム設計(第2回)

第2回となる今回は「インタビュー時のポイント」についてご紹介いたします。
私が実際に行ったアプローチは、教科書通りの分析手法と少し異なる点がありますが、「研修プログラムへの活用」という点におけるリアリティをお伝えできればと思っております。

※インタビューに関しては、誰でもできる!ケーススタディ作成のコツ②にてケース作成時のインタビューのポイントを紹介しておりますので、合わせてご覧いただければ幸いです。

分析のためのインタビューの準備

M-GTAの分析プロセスには、【①データの収集⇒②データの分析⇒③分析結果の応用】という3つのフェーズがあり、今回の扱うインタビューは「データの収集」のフェーズにあたります。このフェーズでは、「分析テーマの設定」と「分析焦点者の設定」が重要となります。

分析テーマは、分析によって明らかにする問いにあたるものです。設定の際のポイントとして、「平易な表現にすること」、「プロセスという言葉を含めること」があります。今回の私の分析テーマは「事業経営人材の出向先会社での経営手腕発揮までの行動プロセス」となります。

分析焦点者は、分析テーマにおける行為の主体者であり、インタビュー協力者となる対象者の集団にあたるものです。今回の私の分析焦点者は「出向先会社での事業経営経験をもつ人材」となります。
また、データの分析のフェーズにおいては、「分析焦点者の視点」でデータの意味の解釈を行っていくことが重要となります。この点は、第3回でお話いたします。

インタビューの協力者の人選

研修プログラムへ活用を目的とした分析においては、「分析焦点者に合致する人選であること」だけではなく、「社内の関係者から見て、納得感がある人選であること」もとても重要な要素です。この点について、私の分析を事例にお話をさせていただきます。

◆最初のインタビュー(15名)
人選は、まず現場から推薦してもらいました。最初に、非ラインマネジャーのうちから出向し、経営に携わっている若手経営人材を推薦してもらいました。経営に携わる上で、若手の段階で身に着けておくべき能力のデータを研修企画に活用したかったためです。
この段階では、15名の協力者へのインタビューを実施し、そのデータを用いた初期的な分析結果を提示しました。

◆追加のインタビュー(6名)
社内からのフィードバックは、「分析のアプローチとその結果は大変興味深いものである一方で、インタビュー協力者に若手が多く、また部門も偏っていて納得感に欠けるためパンチが足りない。」というものでした。そこでさらに社内の協力を得て、「全社的に認知の高い実力者」「部門の偏りの是正」の視点から追加人選を行いました。ダメ押しで、役員にも人選に協力してもらい、インタビュー対象者の層を厚くすることができました。

分析を分析だけで終わらせず、分析の結果を組織で活用していくことをゴールとするのであれば、分析結果の納得度を上げることが重要で、その工夫はインタビュー対象者の人選からはじまる、ということを今回の経験を通じて実感しました。

インタビュー時に心掛けるべきこと:発言を掘り下げていく

M-GTAにおいて、インタビューは「分析のためのデータの質」に影響するため、その実施方法がとても重要です。
インタビューでは、決まった質問を数多く答えてもらうのではなく、インタビュー協力者の発言に対して質問を重ねていくことで、より深い情報を引き出しデータの質を高めていきます。ゆえに、「発言を掘り下げるスキル」が求められます。
インタビュー協力者に自由に経験談を語ってもらうことに主眼をおき、質問の趣旨から外れる回答が返ってきた場合でも、その回答を掘り下げながら、質問の主旨との関連性を探ることを行うこともあります。

この「発言を掘り下げ」において、お勧めしたいこととしては「自分以外にもう1名面接員を同席してもらうこと」です。(注:一般的なM-GTA関連の書籍ではインタビューは1人で実施することが推奨されています。)
私は、講師登壇を通じて発言を掘り下げる経験値が比較的ある方だと思いますが、それでも1対1のインタビュー場合だと効果的な質問を都度考える負荷は高いです。そのため、1人よりも2人ということで、上司にインタビューに同席してもらうこととしました。結果として、以下の3つの効果を実感しました。

①:インタビューの質の向上
交互に質問をしていくことが出来るため、効果的な質問を考える時間が担保され、インタビューの濃度を高まった

②:インタビューデータの信頼性向上
「私1人で聞いた内容」ではなく、「上司と2名で聞いた内容」であることで、客観性が担保され、データの信頼性が高まった。

③:インタビューのスキル向上
上司との振り返りを通じて、「効果的な質問のレパートリー」の幅を広げることができ、自身のスキルアップにつながった

インタビューデータ作成時に心掛けるべきこと

インタビューの内容を分析のための「データ」としてまとめる際には、以下の3つを心掛けました。

①:自分でまとめること
次のフェーズの「データの分析」は、完全に個人作業となります。その元となるデータが自分自身で深く理解しているものでなければ、良い分析をすることは難しいです。ゆえに、ここは他人任せにしたり誰かと分担したりせず、自分で行うべき作業です。今回は、インタビューに同席した上司からもメモ書きをもらい、それと自分のメモを統合し、データ化を行いました。

②:臨場感を意識すること
インタビューデータは、単なるインタビューのログではなく、インタビュー協力者の心情等インタビュー時のやり取りをリアルにデータにすることが重要となります。そのため、インタビュー協力者が実際に使った表現や言い回しをそのまま活用する等、見返した際に臨場感のあるようにまとめることを意識しました。
私の場合は、インタビュー時のメモ書きはスピード重視で「キーワード」を多く書き出しておき、インタビュー終了後の記憶が鮮明なうちにそのキーワードがどのように語られたかを書き起こしておりました。(なお、この書き起こしの重要性は、次回のデータの分析のパートで補足します)

③:録音を使わないこと
過去に聞いた話の受け売りとなりますが、以下のような弊害があると言われております。
・「録音している」という安心感から、インタビュー時の集中力が欠けてしまう
・「後で聞ける」という安心感から、インタビュースキルの向上を疎かにしてしまう
この弊害に関して、私自身、思い当たる部分があったため、今では原則録音無しでインタビューに臨むようにしております。(録音の準備より、他の準備するべきことがある!)

長文にお付き合いいただきありがとうございました。
次回はデータの分析についてお話ししたいと思います。

このReportsは役に立ちましたか? 役に立った 役に立たなかった 2 人中 2 人がこの Reports は役に立ったと言っています。

Reports