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人材育成

誰でもできる!ケーススタディ作成のコツ①(全5回)

私たち三井物産人材開発は、日々多くの方が発信してくださる情報を業務や学びに活かしています。当社における取り組み事例が、企業での人材開発にたずさわる皆様に少しでもお役に立てることがあればと思い、今回は自社事例のケーススタディに関する取り組み内容についてご紹介します。

社内研修の立ち上げ

当社では、2012年より社内研修での利用を目的とした自社事例のケースを作成しはじめ、現在は約10本のケーススタディを展開しています。ここでは自社事例のケーススタディの有用性についてご紹介します。

ケーススタディ自体は自社事例のケースを作成する以前から、様々な研修にて実施していました。ケーススタディの有用性については多くの書籍等で紹介されていますが、マネジメントトレーニングとして効果が高いとされています。また、昨今様々な分野で導入が図られている「主体的に参加する」アクティブ・ラーニングの手法としても注目され、意思決定能力を醸成する効果的な学習手法とも言われています。1920年代にハーバードビジネススクール、ウエスタン・オンタリオ大学で起用されはじめ、現在では多くのビジネススクールで取り入れられています。なお、ハーバードビジネススクールでは授業の約8割がケーススタディと言われており、2年間のMBAコースでは約500のケースを学習するようです。

自社事例のケースを思い立ったのは2012年です。ビジネススクールでの修学経験のある研修受講者から、こんな声が寄せられました。「ケーススタディは当事者の経験を追体験することで当事者の立場に立って考え、色々と議論ができて面白かった。ただ、学んだことの中には、正直実務で活かしにくいものもあった。一般論としては理解できるけどね。」彼の言い分は、他社事例は当社のビジネスモデルのみならず、企業規模や組織形態、パートナー関係等の前提条件が異なるため、現実問題としてそのまま実務で応用できないものが少なからずあるとの論でした。わたしはこの一言をきっかけに、ケースからの学びをより効率的に実務で活かせるのではと考え、自社案件のケース作成を検討し始めました。

題材選定における3つの基準と差別化のポイント

日常のありとあらゆる事象がケースの題材に成り得ますが、ここでは当社が自社案件ケースの題材を選定する際のポイントをご紹介します。ケースには実在案件をベースにしたものと仮想の状況設定のものとがあります。ケースでの学びを実務に活かすことを目的としているため、私たちの作るケースの多くは実在案件をもとにし、「新規ビジネス構築」と「階層の役割期待」の2種類のケースを取り扱っています。

「新規ビジネス構築」は、あらゆる部署で求められており、また「階層の役割期待」は階層別研修で活用しています。作成プロセスは両分野とも共通していますので、新規ビジネス構築ケースをベースにご紹介します。

総合商社は様々な事業分野でビジネスを展開しています。それぞれの事業本部が持つ知見・ノウハウを各事業本部内でとどめることなく、全社員に共有することを目的に、短時間でビジネス構築の要諦を学べるオープンカレッジ形式の研修を社内で立ち上げました。
題材の選定にあたって、私たちは事業部に対して本研修の意図を丁寧に説明し、3つの基準を設けて協力を仰ぎました。

1つ目は、案件当事者がまだ会社に在籍していることです。ケース作成の担当者はその案件の関連資料を読み込むと同時に、資料では収集できない情報や疑問点等を当事者にインタビューしながら作りこみをするため、当事者が協力しやすい現役社員という立場でいることを重視しました。

2つ目は、稟議書やメールのやり取り等のビジネス構築に至るまでの関連資料が存在し、作成者への貸し出しが可能なことです。資料を一通り読み込んだ上で全体感を把握し、インタビューで不足している情報や当時の担当者の意思決定や時代背景を聞き出しながら、ケースを作成していきます。いわば、関連資料はケースの骨格とも言えます。何らかの理由で情報管理が厳しく求められる案件は相応しくないと判断しました。

3つ目は、設立からある程度時間が経過していることです。このような案件は、ビジネスを推進していく過程で、様々な壁を乗り越えている案件が多く、研修でのラーニングポイントを設定しやすくなります。また、設立前や時間が経過していない案件は展開次第では失敗になる可能性もあり、課題に対する対応が、成功か失敗かの見極めが難しく、それぞれのラーニングポイントの設定が難しくなります。また、現実問題として、苦労して作ったケースが作成直後に利用できなくなるようなことはできれば避けたいのが実情です。

なお、一般的にケースは成功案件より失敗案件の方が少なく、失敗案件ケーススタディからの学びは重なものとなりますが、失敗案件は様々な理由でケース化することに課題があることが多く、なかなか選定できないのが実情です。

同じ事業分野で複数のケースを作成する際は、個々のケースにおける学習ポイントの差別化を図ることも重要です。特に当社の場合は年間1本の頻度で作成していますので、この点では特に工夫を凝らしています。差別化ポイントは様々考えられますが、当社の場合は主に業界特性(B to C/B to B)、成功と(前述のとおりケース化は簡単ではありませんが)失敗の2軸で掛け合わせて差別化をはかることや、設問を工夫することでラーニングポイントの差別化を図っています。他にもグローバルでの地域軸や合弁企業等の組織形態でも違いを出すことも可能です。

以上、題材選定のポイントを述べてきました。当社内での事例ですし、私たちも学びの途上ですので、あくまで一つの参考情報としていただければ幸いです。今後、ケーススタディ作成で気を付けるポイントを複数回にわたってご紹介します。次回はケースを作成するにあたって最も重要な情報源となる当事者インタビューのポイントについてご紹介します。月に1度くらいのペースで掲載予定ですので、お待ちいただけると幸いです。

小林 陽一
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