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誰でもできる!ケーススタディ作成のコツ③(全5回)

全5回のシリーズもいよいよ第3弾に突入し、折り返し地点になりました。前回まではケース選定からインタビューまで、ケーススタディに必要な情報収集のポイントをご紹介しました。今回から次回にかけては、ケースライティングのポイントを2回に分けてご紹介します。

ケースライティングの担当者

 ケースライティングは、可能であれば研修でのファシリテーターが担当することが望ましいです。ケースを作成する過程で、事例の本質的な内容を深く知ることができますので、研修当日はファシリテートしやすくなります。ケースは研修資料の一部です。他者の作成した研修資料ですと表面的な解説になりがちですが、自ら作成したものは記載内容の本質的な意図や背景を理解してファシリテートできるため、受講者の納得感が高まります。ケース作成者がずっと継続してファシリテートすることは困難でも、初回のファシリテート結果をティーチングノートとしてまとめることは後の研修にとってとても有効です。
 一方、ケースライティングは外部業者へ委託することもできます。弊社では、担当者の業務状況、作成内容、予算に応じて使い分けています。

外部業者に委託する際のポイント

外部業者に委託する場合は、インタビューやライティングに関わる手間が省ける反面、費用は高額になるケースが少なくありませんし、作成期間はどうしても長期化しがちです。委託先は研修会社や書籍執筆者、大学教員など様々です。ライターによって、費用、期間とも大きく異なりますので、委託する際は数社に声をかけて、比較検証することをお勧めします。
続いて、外部業者に委託する際に注意すべきポイントをご紹介します。
 まず、1点目は「ケースライティングの進め方」についてです。外部業者への委託は、ややもすると、丸投げになりがちですが、作成プロセスにはしっかりと関わることが重要です。特にケーススタディで学んでほしいポイント(ラーニングポイント)の設定は研修企画主体である自らが行い、それに見合ったストーリー構成になるようしっかりと監修することが必要です。その為、インタビューには必ず同席し、ラーニングポイントに関する質問を投げかけるように調整します。インタビューでは必要に応じて補足質問し、案件内容を詳しく把握するように努めます。その後のケースの監修や、ケースディスカッションでのファシリテートに役立ちます。
 2点目に注意したいポイントは、契約条件です。まず、著作権は自社で所有することが重要です。後々、ケースを修正する必要が出てきた際に有益です。ケースは作成後にビジネス環境の変化に伴い修正することがままありますし、追加ケースの作成などの企画自由度を担保するためにも、著作権は自社で保有することをお勧めします。また、細かい点ではインタビューに伴う出張旅費等の必要経費についても、細かく取り決めておくことが有用です。特に海外取材が必要なケースでは、ホテルや交通機関のグレード設定や出張回数の事前確認などをお勧めします。

自社で内製する際のポイント

 自社でケースを内製する場合は、費用が抑えられる反面、手間がかかります。作成期間は作成担当者の他の業務との兼ね合いにもよりますが、通常3~6カ月を要します。主な作業工程は、ケース仕様書の作成に始まり、題材の関連資料の読込、関係者へのインタビュー、ライティング、関係者の監修を経て完成に至ります。特に、他の業務と並行して進める場合は、スケジュールが遅れがちになりますので、初期段階でガントチャート(工程管理表)を作成し、週ごとにタスクの進捗状況を確認しながら進めていくことお勧めします。
 初期段階の「ケース仕様書」の作成は、ライティングの背骨にもあたる、もっとも重要なポイントです。ここを確り抑えることで、テーマが明確になりストーリー構成を描きやすくなります。ケース仕様書は、主に以下の項目を踏まえて、作成します。

①主題: ケーススタディのテーマ。主題を設定することでラーニングポイントを踏まえたストーリーを描きやすく、研修参加者の学習効果が高まります。
②事例: 主題に見合った題材を選定します。インタビューで関連情報を収集しますので、事例の当事者含め、対象者に比較的容易にアクセス可能な案件がお勧めです。
③対象: 研修対象者を明確にしてから、読み手の視点を想定しつつケースを作成します。研修参加者は当事者意識をもってケースを読み、ディスカッションに臨めるため、研修での気づきが大きくなります。
④内容: 記載する情報、情報の入手方法、誰の視点で書くか等、大まかなケースの骨子を作成します。全体構成がイメージでき、ケースライティングが進めやすくなります。
⑤設問: 主題やラーニングポイントを踏まえた設問を作成します。設問は通常3~5つ設けます。前半の設問はなるべく多くの回答を引き出しやすい内容にし、後半の設問はラーニングポイントの本質を深く考えさえる内容にしていきます。特に最後の質問では、研修での気づきを実務につなげる設問を設けるのが有効です。
⑥学習成果: あらかじめ設定することで、ケース作成の際にラーニングポイントをストーリーに落とし込みやすく、また、研修実施の際にはラーニングポイントを意識してファシリテートしやすくなります。

「事例研究」と「ケース・メソッド」の違い

「事例研究」を用いた研修と「ケース・メソッド」を用いた研修は似て非なるものです。
「事例研究」は、多かれ少なかれ、筆者の主観の影響を受けて書かれたものです。筆者の提示した結論から学ぶため、理論化・概念化しやすく終着点(学習ゴール)が明確になります。一方、一般的に補助教材を用いてレクチャー形式で理論を紹介するため、学習は受動的になりがちです。
一方で、「ケース・メソッド」は、「実践から学ぶ」ことを目的としたもので、主にディスカッションを通じて結論を導き出すプロセスから学びます。学習者自身が議論を通じて理論を導き出すため、終着点は多様になり、学習は能動的になります。ケース・メソッドでは、ケースそのものからは理論化された知識を学べない反面、定量的・定性的な分析力、洞察力・創造性、論理性や判断力等の実践的な力を、ディスカッションを通じて自らの経験と紐づけながら内省して概念化することができます。一方で、学習成果は参加者次第で変動しますので、参加者が当事者意識をもてるように工夫が必要です。
 「事例研究」と「ケース・メソッド」の違いを理解したうえで、企画する研修の目的に照らし合わせて使い分けると良いでしょう。

以上、今回はケースライティングの前編として、主に手法について述べてきました。次回は、後編としてストーリー構成や設問を設ける際のポイントについてご紹介します。

小林 陽一
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