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REPORT


研究レポート

東京大学との共同研究「多様性を力に変える組織開発に向けて」

今回は、2019年1月より進めている「組織の包摂性(Inclusion)」に関する東京大学との共同研究について紹介いたします。

 

昨今、多様性(Diversity)への理解や、多様性を包摂・統合(Inclusion)することに注目が集まっています。組織開発・人材開発の観点では、何がこれらを阻害しており、どうすれば組織の包摂性を高め、組織の力を最大限活かせるのかが課題となっています。

こうした課題意識のもと、東京大学大学院・教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターの星加良司准教授、飯野由里子特任助教をはじめとするチーム/以下、東大チーム)*と共に、組織の包摂性に関する調査・分析と、新たなプログラム開発に取り組んできました。

 

研究はまだ継続中ですが、本レポートでは中間報告という形で、研究の概要や一部結果につき公表いたします。

1.研究の概要

今回の共同研究では、以下の2点に取り組んでいます。

①組織風土を測定する指標の開発、およびそれを用いた調査・分析

②包摂性を高める施策の開発・実施と効果検証

①の指標開発においては、過去の先行研究をレビューし、組織の課題感に即したものとして、次の3つの指標をベースに、日本の企業文化を踏まえた項目を加えた新たな指標を開発しました。

(1)「男らしさを競う文化(MCC:Masculinity Contest Culture)」指標
(2)「有害なリーダーシップ(Toxic Leadership)」指標
(3)「インクルーシブな風土(Climate for Inclusion)」指標

2020年8月、開発した指標を用いて、日本企業(A社)社員約2,000名(男性約1,300名、女性約700名、20代~70代まで幅広く回答)に対して組織風土の調査を行いました。

 

②の施策の開発・実施においては、既に東大チームが開発済みである「多様性を理解する」ワークショップを約100名のラインマネージャー層に実施。加えて、組織風土の調査結果を踏まえて開発した、「多様性を力にするコミュニケーション」ワークショップを、前述の参加者の内20名に対して実施しました。現在、効果検証を行っているところです。

2.研究の中間成果

調査の更なる分析や、施策の効果検証は引き続き実施中ですが、ここまでの研究で見えてきた成果を報告します。

 

(1)組織風土の測定指標、および調査結果から見えてきたこと

男らしさを競う文化に関連して先行研究で用いられた4つの尺度に加え、日本企業の特徴をふまえた「家父長制(和を重んじる、上司を立てる、会社への愛着)」という尺度を新たに開発し、調査を実施しました。

今回行ったA社社員約2,000名への調査結果から多くの示唆がありましたが、中でも注目したい3点をここでは紹介します。

 

・男らしさを競う文化(MCC)の中でも、職場全体としても個人の意識レベルでも「強さとスタミナ(折れない心、健康であることや体力が重要)」と「家父長制」に高い価値を置く文化が根付いている。

・職場におけるMCCと、有害なリーダーシップとの間には正の相関がみられた。すなわち、職場の男らしさを競う文化が、有害なリーダーシップを育む可能性が示唆される。

・全体的には、有害なリーダーシップが確認されると、インクルーシブな職場風土を低く評価する傾向が見られた。一方、男性の場合はこれとは異なり、有害なリーダーシップを認知しつつ、インクルーシブな職場風土も高く評価する傾向が見えた。男らしさを競う文化風土が、リーダーシップの評価の在り方に影響を与えている可能性が考えられる。

 

(2)多様性を力にするコミュニケーションの可能性

今回、新たに開発したワークショップは、主に、マジョリティの側からは見えにくい社会構造上の不均衡を可視化し、心理的バイアス等に対する感受性を高めることや、身近なコミュニケーションに現れる「マジョリティ性」や不均衡への気付きを得ること、インクルーシブ・リーダーシップに向けたコミュニケーション上のヒントを提供するものでした。

効果検証の途中ではありますが、ワークショップ参加者の自由回答からは、

・無意識レベルでのバイアスに気づき、無視もしくは見落としていた意見を拾い上げた上で意思決定を行いたい

・部下を見る際によりフェアに見ることができる

・組織内で関係性の文脈の中でバイアスが無意識にもたらす影響を組織員が意識し、よりD&Iを加速できる

・当たり前と思っていた前提を疑うようになると望ましい

・少数意見を尊重するマインドの醸成、声の大きい人の意見だけが通る文化の是正が大事

・対上長やチーム内意見交換における遠慮や忖度の低減を行いたい

等の回答が見られ、男らしさを競う文化や有害なリーダーシップの改善に向けた動機付けが一定程度生じている様子が見られました。

ただし、単発の研修の効果は限定的なため、現在フォローアップ施策を検討中です。

 

3.今後の展望

本研究では、過去の先行研究をベースにした組織風土の測定指標の作成や、多様性を力にするコミュニケーションに関する施策の開発を実施し、それらが包摂力の高い組織に求められる現状認識の向上と、組織変容に一定の効果をもたらすことが見えてきました。

 

また、本共同研究を進める中で、米国等の先行研究と比較し、リーダーシップのあり方が組織文化を規定するというよりも、逆に、組織文化がリーダーシップのあり方を規定する力を持つことが見えてきました。このことから、リーダー個人の資質や能力、技法等に還元されがちだった従来のリーダーシップ論に対して、フォロワー層も含めた構成員相互の関係性や組織風土の問題として、リーダーシップを捉える新たなモデルへ転換していく必要性が見て取れます。

中でも、男らしさを競う文化、特に、強さやスタミナや家父長制に代表される組織風土は、日本の大企業特有の特徴と感じます。

 

今後は、包摂力の高い組織づくり、とりわけ、日本の企業組織において、個が抑圧されることなく尊重され、かつ組織のベクトルも損なわれることなく強化されるような、一人ひとりの多様性を力に変えるための「インクルーシブ・リーダーシップ」のモデル化や、促進に向けた施策の検討に向け、さらに研究を進めてまいります。

 

今後、弊社HPでの紹介等を通じて皆様にも知見をお届けできればと思います。

 

*OTD(Organizational Transformation for Diversity)という活動を通じ、マジョリティの側が無意識に持つ特権的な環境や「当たり前」に気付き、組織の不均衡の是正に一人ひとりが向き合う機会を提供することで、組織変革の実現や働きやすい職場づくりを目指している。詳細はこちら

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